皆さんは「南蛮」という単語の意味を知っていますか?

チキン南蛮、鴨南蛮、南蛮漬け、南蛮人・・・・・。

「南蛮」がつく言葉は私たちの身近にたくさんあり、皆さんも普通に使われると思います。しかし、多くの人はその意味をあまり知らずに使ってらっしゃるのではないでしょうか。私もそのうちの一人でした。

ただ私の場合、「南蛮」という言葉に関しては、意味を知らないまま使うのが嫌だったので調べてみました。というのも、私は人一倍「南蛮」という単語に愛着を持っています。その理由は私が生まれ育った町にあります。


南蛮亭の五色うどん

私が生まれ育った町の近くには、日本が鎖国を行っていた江戸時代にポルトガルと貿易を行っていた出島やキリシタンの島と言われる天草諸島があります。

私の実家の近くに五色島という無人島があり、幼い頃、家族でボートに乗ってよくキャンプに行っていました。そして五色島に行った帰りは、決まって港の近くにあるうどん食堂で夕食を食べていました。

アットホームな雰囲気で外国人客も多いというのが特徴のうどん食堂。うどんがメインの食堂で、普通のうどん屋さんとは少し雰囲気が違います。私たち家族は「南蛮亭」と呼んでいました。看板などもなく、当時の私はそれが店の名前なのかどうかも分かりませんでした。おそらく店の名前だと思いますが。

この南蛮亭には「五色うどん」という食べ物がありました。私は昔からこの五色うどんが大好きで大好きでたまりませんでした。と言っても、有名な五色そうめんのように色鮮やかな五色の麺があるわけでもなく、見た目は特にこれといった特徴もないごく普通のうどんです。五色島になぞらえて「五色うどん」と名付けられたのでしょう。後から両親に聞いた話によると、五種類の具材が入っているという意味もあったらしいです。

独特の出汁と麺、具材の相性が抜群で、幼い子供から年配の方、そして外国人にまで愛される名物メニューでした。私はまだ、南蛮亭の五色うどんを超えるうどんに出会ったことがありません。丼ものや定食など他の食べ物もあり、どれもとても美味しく、看板もないお店にも関わらずとても人気でいつもお客さんでいっぱいでした。幼い頃の私は、「南蛮亭!南蛮亭!」と言っていつもごねていたそうです。(苦笑)

そんなわけで、私は「南蛮」という単語に幼い頃から愛着があるわけですが、先日その意味を知らないと気づいた時、恥ずかしいような腹立たしいような何とも言えない気分になりました。


「南蛮」の由来は南の野蛮人?

南蛮という単語の由来や意味について調べると次のようなことが分かりました。

・南蛮は主にヨーロッパ(特にスペイン・ポルトガル)や東南アジアのことを指す

・もともとは中国の言葉で、南方の野蛮な人という意味

・南蛮料理とは長ネギや唐辛子を使用した料理のこと


もう少し詳しく説明します。

「南蛮」という言葉はもともと中国で使われていた言葉で、東南アジア人など南方の異民族のことを指し、「南方の野蛮な人」という意味で使われていました。この「蛮」という文字は「虫」が入っていることから、人間じゃないという意味を込めた悪字でもあるそうです。

日本においては、主に江戸時代に貿易をしていたスペイン人やポルトガル人などの西洋人のことを指します。全然悪い意味はなく、むしろ親しみを込めてそう呼んでいるように思えます。そして、西洋から伝わってきた長ネギや唐辛子(別名は南蛮辛子)を使った料理のことを南蛮料理と言うそうです。チキン南蛮や南蛮漬けなど料理名に「南蛮」がつくような料理には、長ネギや唐辛子などを使われているのです。

そういえば学生時代、南蛮人とか南蛮貿易とか習ったような・・・(苦笑)

南蛮亭がもっと好きに

「南蛮」の意味を調べてみて、南蛮亭のことがもっと好きになりました。

思い返してみると、五色うどんを始め、うどんや丼ものなど南蛮亭の商品には全部長ネギが入っていました。もちろんテーブルの上には唐辛子もありました。その名前から外国人のことも考えた工夫をされていたのかもしれないと考えると、外国人のお客さんが多かったのも頷くことができます。

南蛮亭という名前にはそのような意味が込められていたのかと思うと何だか胸が熱くなってきました。そして何よりアットホームな雰囲気と圧倒的な美味しさの味を思い出すと、南蛮亭の五色うどんが恋しくてたまりません!